着物のアイロンのかけ方｜スチームアイロンや帯のシワの取り方も

着物を丁寧に畳んでいても、いざ着る時に折りジワが入っていた経験はありませんか？シワを伸ばすために毎回クリーニングに出すとコスパが悪く、着物を着る度に気が重くなってしまいます。そんな時は自宅でアイロンがけするのがおすすめです。

しかし、いざアイロンをかけようにもかけ方が分からず躊躇してしまいます。着物の素材には正絹や木綿、麻などさまざまなものがあり、むやみにアイロンをかけてしまうと変色や縮みの原因にもなりかねません。

ここでは、着物の素材に合わせた基本的なアイロンがけの方法や帯のシワの取り方をお伝えします。スチームアイロンは使えるかといった疑問やアイロンがけの注意点も見ていきます。また、帯のアイロンのかけ方についても合わせてお伝えしていきますので、着物のお手入れに悩んでいる方は参考にしてください。

着物に熱を加えるのは基本的に避けるべきです。そのため、初心者の方はまず比較的熱に強い木綿や麻の着物で練習しましょう。なかなかシワが取れない場合は、霧吹きを使って手際よくアイロンをかけるのがおすすめです。

たたみじわ程度しかない場合は、できるだけ着物全体を広げずにアイロンをかけます。アイロンはドライで中温から高温に合わせて設定しておきます。絹の温度表示がある場合は、それに合わせます。着物のシワがある部分をアイロン台に当て、手で伸ばせるシワは伸ばしておきましょう。

着物の裏地に当て布をし、アイロンをかけます。この時長く同じ場所にアイロンをかけたり、強く押し当てないように気を付けます。熱を加えすぎると縮みや傷みの原因になるので、軽く押える程度で素早くアイロンを動かすのが最大のポイントです。

シワが伸びにくい場合は、着物の裏地に霧吹きを吹きかけ当て布をしてからアイロンをかけます。木綿や麻の場合は水に強いため、霧吹きをするとシワの間の繊維に水分が入り込み、アイロンで乾せばシワが伸びる仕組みになっています。

全体の場合は、着物全体を広げてアイロンをかけながら畳みます。最初に袖部分に当て布をしてアイロンをかけます。そうすれば、全体にアイロンをかけ終えた時に綺麗に畳みやすくなります。 

次に着物の裏の裾から身頃周辺にかけて進めまいきます。縫い目と折り目が垂直になるようにアイロンをかけます。身頃周辺まで進んだら、見頃から肩口、衿にかけて進めます。シワがしっかり伸びているかわからない場合は、一度着物ハンガーにかけて確認しましょう。

せっかくアイロンをかけても、縫い代を持ち上げてしまっては着た時に不格好になってしまいます。縫い代には注意してアイロンをかけてください。また、すぐに着ない場合には、本畳みをしておくとシワが入りづらいです。 

まず刺繍が金糸ではないかを確認しましょう。金糸の刺繍の場合、下手に熱を加えると縮んでしまう可能性があります。刺繍がない部分だけでもアイロンをかけたいときは、帯の形に合わせてアイロンがけしましょう。 

まず帯の裏側に当て布をし、中温にしたアイロンをかけます。軽く押す程度の力加減で、すばやく動かしましょう。同様に表側も当て布をしてアイロンがけします。シワが取れない場合には、当て布に霧吹きをしてから帯に当てアイロンをかけます。

注意点として、刺繍や金銀箔が付いている場所にはアイロンをかけないようにします。刺繍部分が縮んでしまう原因になりますので、シワが多い場合は専門店に持っていくのをおすすめします。 

袋帯の場合、お太鼓部分に汚れが溜まりやすいです。帯は基本的に洗えないので、柔らかい木綿の布か毛足の柔らかいブラシでホコリをはらいます。袋帯も半幅帯と同様、裏側から当て布をしてアイロンをかけます。

お太鼓部分は、アイロンの先端部分を使って帯の形に沿ってかけます。表側も同様に当て布を当ててかけます。半幅帯に比べ、袋帯の方がさまざまな糸を使った刺繍が多い場合があります。刺繍の素材がよくわからない場合は、専門店に任せるのをおすすめします。 

正絹とは、絹100％の生地の着物を指します。正絹は特にデリケートな素材なので、アイロンがけをするときは注意が必要です。また、水にとても弱い素材のため、霧吹きを使う時は気をつけます。 

シワのある部分をアイロン台に当て、裏側に当て布をして中温にしたアイロンをかけます。この時、軽く乗せて素早くすべらせるのを意識してください。これでシワが伸びない場合は、着物ではなく当て布に霧吹きをしてアイロンをかけます。 

水に弱いため水分を含みすぎた場合は縮んでしまったり、水シミになってしまう可能性が高いです。また、刺繍の入っている部分にはアイロンをかけないようにしましょう。初心者の方は無理をせず、クリーニングや専門店にお願いするのをおすすめします。 

着物のアイロンがけにスチームが使えるのは、原則「木綿の着物だけ」と思っておきましょう。着物には正絹やウールなど水や熱にとても弱い素材のものがあります。また刺繍糸もさまざまな素材が使われています。 

スチームは、蒸気を出し温度が高くなるため、素材が傷んでしまい生地が大幅に縮む恐れがあるのです。どうしてもシワが伸びない場合には、霧吹きを使うようにしましょう。また霧吹きを使うときも素材によって注意が必要なので、心配な場合は当て布に霧吹きをしてアイロンをかけるようにしましょう。 

当て布をせずそのままアイロンをかけてしまうと、生地が傷んでしまうだけではなく色褪せる原因にもなります。また、生地の表面に思わぬテカリが出てしまい不格好になってしまいます。

当て布に使う布は、できれば木綿の生地で薄めのものが好ましいです。また白い布を使いましょう。霧吹きなどで水分を含ませたときに、色移りをしないとも限りません。手ぬぐいや大きめのハンカチなど、アイロンがけしやすい大きさのものを選びましょう。 

生地の柔らかい風合いが着物の良さでもあります。せっかくの柔らかい風合いがアイロンを強く押し当ててしまうため、繊維がつぶれペタッとした薄く硬い印象になってしまいます。また、強く押し当ててしまうと着物の繊維が傷み、色褪せやすくなってしまい長持ちしなくなります。

部分的に強く押し当ててしまうと、アイロンの型が付いてしまう可能性もあります。小さなシワに気づかず強くアイロンをかけてしまうとなかなか取れないシワになるので、注意しましょう。 

以下のような着物は自宅でのアイロンがけに向きません。当てはまっている場合、自宅でアイロンをかけるよりもクリーニングや専門店にお願いするのをおすすめします。 

• 刺繍が入っている
• 金箔や銀箔が使われている
• 正絹の素材が使われている
• 天然染めなどの自然素材で染色されている
• 金糸や銀糸の刺繍が入っている
• 素材がわからない
• 染め方がわからない
• 振袖や留袖、訪問着などの礼服
• 着物のシワが深い
• 着物全体が凹凸のある生地
• シミがある
• 目立つ汚れがついてしまっている
• 衿元にファンデーションなどの汚れがある
• カビが生えてしまっている
• 箪笥の臭いが染みついてしまっている
• 変色してしまっている
• 紋が入っている羽織など
• ワンシーズンに10回以上着ている
• 汗が染みついている 

まず、ハンガーに着物をかけて形を整えます。この時にシワのある部分を探しながら、手で軽く生地を伸ばします。生地から20～30cm離し、シワの気になる部分にスプレーを振りかけます。しっとりとする程度にスプレーをしたら、手でスプレーをかけた周りの生地を掴みシワ部分を軽く伸ばして自然乾燥させます。 

同じ場所に大量に振りかけたり、手で思い切り生地を伸ばす必要はありません。自然乾燥で干すと自然とシワが伸びます。 

便利なシワ取りスプレーですが、使用できない着物もあります。絞りがあるものや凹凸のあるもの、ちりめん素材には向きません。また、シワが深く入ってしまっているとスプレーでは取れない:場合もあります。アイロン同様、刺繍や金箔・銀箔の入っている部分にも変色の恐れがあるので使えません。 

また、アルコールが含まれているため、何度も使用するのもおすすめしません。変色の原因になってしまいます。困った時の緊急用くらいに考えて使うようにしましょう。 

相場が2,000～10,000円と幅の広い着物クリーニング。丸洗いだけならそんなに高くはなりませんが、染み抜きなどのオプションが付くためプラスになっていきます。クリーニング店によってはしわ取りのみの対応をしているお店も。また着物の種類によっても値段は変わります。 

あまり安すぎると、逆に薄汚れた印象で戻ってくる場合もあります。特に、振袖・留め袖・訪問着などの生地が高価なものをクリーニングに出す場合は注意してください。丸洗いの必要がない場合は、染み抜きだけなどで出すのもおすすめです。 

お店によってプレスだけをしてくれるところもあります。事前に問い合わせてみるのをおすすめします。また、事前に自宅でシミがないかチェックをしておくか、シミのチェックをしてくれるお店なのか確認しておきます。シミがついたままプレスされてしまう可能性もあり、戻ってきたときに前よりひどい状態になるケースもあるので注意しましょう。 

アイロンを使わずシワを伸ばす方法を見ていきます。着物についたシワはハンガーに掛けて一晩吊るしておくと目立たなくなります。市販のシワ取りスプレーを活用してもいいですが、その場合は着物に使えるかどうか確認してください。不安な場合は和装衣類専用のスプレーを使うのをおすすめします。

次に着物を着る時、シワができないようにするには畳み方が重要になってきます。着物を畳む時は縫い目に沿って畳むのがコツです。丁寧に畳んだ後は畳紙を使用し保存しておきます。あまり詰め込み過ぎるとシワの原因になるため、余裕をもって収納してください。

着物を着た後は衣紋掛けやハンガーにしばらく吊るしておくのがベターです。その後、丁寧に畳んでおけばシワができにくくなります。

着物をきれいに着るためのアイロンがけの方法を紹介しました。前日から準備をして、美しくおしゃれな着物を楽しみましょう。着物にかけやすい大きさのアイロンやアイロン台もあるので、自分に合った方法で着物をお手入れしてください。